デンマークが幸せな国と言われるのは幸福度と教育と社会福祉の充実にある。
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社会福祉国家デンマークが”福祉国家”であり、「世界一幸福な国」と言われる理由に迫ります。
当社のメディアサイトを読んで頂いている方、また、新しく来てくださった方、いつもお世話になっております、企画広報室の石原です。
この記事では、デンマークより、フォド・スヴェンセンさん、エヴァ・スヴェンセンさん、千葉忠夫 氏をお呼びして開催された「ノーマリゼーション in 長崎」。
その講演の中の千葉 忠生先生(以下、千葉氏)の講演③ 社会福祉国家への道「幸せな国づくりの方程式」の内容(参考)に基づきながら、デンマークという国が幸せと言われる理由についてわかりやすくまとめています。
あなたが社会福祉国家デンマークの社会福祉に興味があり、デンマークについて勉強してみたい!または、実際に現地に行きたい!と考えている方なら、参考になると思います。
以下より、その他の講演の内容も合わせてお読み下さい。
- 講演① 安心して老いられる老後「社会福祉国家と介護保険制度国家の課題」
- 講演② 障がい者施設勤務者として生活指導教諭資格の必要性
- 講演③ 社会福祉国家への道:「幸せな国づくりの方程式」【本記事】
では、講演③ 社会福祉国家への道「幸せな国づくりの方程式」についてお届け致します。
デンマークの幸福度(幸せな国と言われ理由)をサクッと10分で学べる動画
その理由は、社会福祉/教育/介護/医療/暮らしにある
以下より、動画よりも詳しくテキストで解説していますのでご必読下さい。
ではまずはじめに、ノーマライゼーションの意味とは?という部分を簡単にご説明させてください。
ノーマライゼーションの意味とは?
ノーマライゼーション
1960年代に北欧諸国から始まった社会福祉をめぐる社会理念の一つで、障がい者も、健常者と同様の生活が出来る様に支援するべき、という考え方である。また、そこから発展して、障害者と健常者とは、お互いが特別に区別されることなく、社会生活を共にするのが正常なことであり、本来の望ましい姿であるとする考え方としても使われることがある。またそれに向けた運動や施策なども含まれる。
引用元:ウィキペディア
この概念は、デンマークの社会福祉の土台となり、社会省の行政官として知的障害者の福祉向上に尽力したニルス・エリク・バンク=ミケルセン(デンマーク)により初めて提唱され、スウェーデンのベングト・ニリエにより世界中に広められたことで知られる。
つまり、”人間、みな平等”であるということを説いている。
私たちの目指す目的でもある
こちらの『会社の概要』の中で公開している当社の企業理念である”ノーマライゼーション”。
私たちは、利用者さま、その家族、そして職員それぞれの個を尊重し、”ノーマライゼーション”という理念をもとに日々精進しております。
しかし、もちろんすべての面でそれが成されている状況かと言えば決してそうではありません。運営する側しかり、職員しかり、その”ノーマライゼーション”の精神を忠実に遂行できるほど、私たちは強くはありません。そしてそれは強くあってはいけないのかもしれません。
弱さを知らずに、強さを身につけるべきではないと考えています。
私たちの思いと共に
辛いことや悲しいこと、そして楽しいこと嬉しいこと、そのひとつひとつから見えてきた光を、切磋琢磨しながら”ノーマライゼーション”という精神にできるだけつなげていくこと、可能な限り実現できるように努めていくこと、それが私たちの目的です。
このように、”ノーマライゼーション”という考え方は、私たちが介護福祉事業を行う上での大切な理念であり、日本の社会福祉をより良い方向へ導くためのものだと信じています。
では早速、そのノーマライゼーション発祥の地であるデンマークに単身渡欧して40年以上の歳月をかけて、日本を住みよい国にするために千葉氏が持ち帰った ー
「幸せな国づくりの方程式」についてお届けします。
また以下の資料は2018年内に変更がある場合もありますので、若干の数字の差があることをご理解ください。尚、記事の文章内には最新の情報(2018年)を記載しています。
幸せな国づくりの方程式
デンマークの国民は80%以上が自分たちの国は幸せだと思っています。しかしもちろんそうではないと考えている人もいます。
アメリカやイギリスなどの大学の先生が国民調査した結果、デンマークは2018年時点で3位となっており、幸せな国と言われています。(ROCKET NEWSより)日本は2018年時点で54位(HUFFPOSTより)。
では、デンマークがどのようにして社会福祉国家になったのか?
デンマークという国を紐解きながら解説していきます。
日本とデンマークとの距離
日本からデンマークまでの距離は約9,000Km。直行便で約11時間(2018年時点)ほどかかります。
デンマークの都市について
- デンマークの首都:コペンハーゲン
- 第二の都市:オーフス
- 第三の都市:オーデンセ
デンマークと日本の比較
人口や面積について
日本とデンマークでは、面積に約30万km2以上の差があります。それに伴い、人口の数も1億人以上も日本と人口の差があります。
総選挙投票率の違いに注目
デンマークと日本の総選挙投票率について、日本は50%ちょっとという数字に比べて、デンマークは80%以上の投票率になっており、明らかな違いがあるのがお分かり頂けると思います。これには国民性しかり、教育や社会の仕組みに大きな違いがあります。
世界でデンマークの投票率を上回る国はいくつかありますが、いずれも投票が義務化されており、棄権すると罰金が課せられる国だけです。デンマークでは投票は義務ではありません。つまりデンマークの投票率は事実上世界一であると言えます。デンマーク国民の政治参加意識の高さが現われています。
進学率も大きく違う
大学への進学率についても、日本が50%以上の進学率に対して、デンマークでは20%以下という低い水準になっています。ここも、デンマークと日本との”教育方針”に大きな違いがあります。
日本とデンマークの教育の違いについては、後ほど詳しくご説明します。
平均寿命と高齢化率について
日本は4人1人が高齢者
日本の総人口は1億2642万人(2018年12月時点※総務省統計局より)、65 歳以上の高齢者人口は3000万人以上になっており、「平成28年度版高齢社会白書」からみると、日本の高齢者の占める割合は26%以上となりました。
それに比べて社会福祉国家のデンマークの高齢化率は低い数値を表しています。しかし、高齢化率の数値の低い高いにかかわらず、より良い福祉社会の実現に向けて、デンマークでは強いイニシアティブで政策を進めており、地方分権=地方自治体が医療・介護・福祉などの社会保障を実施しているので、老後も安心して暮らせる地域社会を実現しています。
消費税率25%でもデンマーク国民は満足している
消費税率25%、所得税率50%と高納税国ではありますが、医療費や出産費、教育にかかる費用などのほとんどが無料で利用でき、高齢者サービスとしても、高齢者を「介護の対象」ではなく「ひとりの個人」としての社会福祉が充実しています。
出生率も日本よりも高い
内閣府が公開している出生率に関する発表(世界各国の出生率)からもわかるように、日本やデンマークしかり、先進国の多くは少子化の傾向が伺えます。
とは言え、先ほどご紹介したように、日本に比べて人口の少ないデンマークでは、女性労働者の確保は必要不可欠な状況です。そんな中、日本より高い出生率のあるデンマークの少子化の対策については、「出産から育児にかけて安心できる」というポイントで大きく分けて以下の2つの特徴があります。
- デンマークでは国が出産費用を100%負担
- 出産前後の検診も含めすべて無料
この2つの社会福祉を実現していることから、育児費用という子供を育てる上で懸念されることについて、「出産」と「育児」の環境の敷居が非常に低いように感じます。また補足しておくと、男性の育児休暇(有給休暇)も2週間ほど与えられますので、そもそも日本における「男性=仕事」と「女性=家庭」という抜本的な概念は、デンマークでは通用しないということです。
ゆりかご以前から保証されている
ゆりかご以前から保証されていることは、妊娠、出産、育児の指導を保健師が無料でやってくれます。また、デンマークには家庭医(ホームドクター)がいます。家庭医も出産育児に対して無料で診察指導してくれます。
つまり、先ほどお伝えしたように、人口が少ないデンマークでは女性の労働力の確保は必要不可欠で、女性でもスムーズな仕事復帰を促すような育児の体制を充実させた結果、女性の「出産〜育児」に対する意識(子供は資源)は日本とは全く別の見方をしていることもあり、日本より「出生率」が高い数値を表しているのだと言えます。
医療に関しても心配が少ない
子供が大きくなって、仮に入院が必要になった時などの入院費や手術費も全て無料です。これは全国民が対象となっています。
このように医療に関わるほとんどのことを無料で受けられるということは、自分、もしくは大切な人が病気した時の心配がなく、非常に国民の生活へ安心感を与えています。
さらには、障がい者福祉に関しても、日本でも自立支援法でどうのこうのとやっているが、本当に障がい者が自立できるくらいの保証までには至っていないのが現状だと思います。
物理的な面も、年金などの金銭的な面など不十分です。障がい者が本当に安心して生活できない国であると言えます。
デンマークの場合は、ある家庭に障がい者が生まれた場合や、中途障がい者が生まれた場合、その家庭の収入などに一切関係なく、国から障がい者にかかる一切の費用を全て保証されます。本人負担や一割負担なんてことはあり得ません。それは、デンマークという国が、障害というものを、それぞれの家庭の問題ではなく、国の問題と考えているからです。
もちろん、障がい者を持つ家族がみなで協力し合うとういう点では日本の良いことでもあります。しかし、経済的に非常に困ることが多くあります。しかしそういう時こそ、国がしっかりと障がい者に対して保障してくれれば、家庭の中での本当の心配もなくなると思います。
GNIと労働について
ざっくりとデンマークと日本のGNIの差を見てみると「デンマークは日本に比べて、労働時間が少ないのに所得は高い」というGNIの数値が出ています。
GNIとは?
国民が1年間に新たに産み出した財とサービスの付加価値の合計のこと。「gross national income」の頭文字をとったもので、日本語では「国民総所得」という。
引用元:コトバンク
国民の幸福度が高いのは信頼からなるもの
国民の幸福度が高いと言われるデンマーク。デンマークの個人所得の数値からみても、日本で考えれば”裕福”な暮らしができるほどの個人所得なのがわかります。これに加えデンマークでは、所得以外にも多くの”安心できる生活”が存在しています。
デンマーク人には個人個人に身分証明の番号が記載されたカードを持っています。政府は、その個人の納税、信用、犯罪、医療などの詳細な個人情報を把握しています。それは一人の人生を記録されたものになるので、デンマーク人同士では”信頼と信用”があるからこそ、人の尊厳や平等、そして個を尊重した社会があります。
例えば、こちらのサイト(THE EPOCH TIMES)の情報によると、デンマーク人は豪雨でも自転車を漕ぎます。その理由は「自分たちが積極的に地球温暖化に対応している」からだそうです。さらに、北欧に属し寒冷地帯であるデンマークであるにも関わらず、「ストアの外に赤ちゃんをベビーカーに載せたまま、自分たちはストアで買い物をする」という。赤ちゃんが寒さで凍えてしまうんじゃないか?という心配もあるし、それ以上に誘拐されてしまうんではないか?という心配もあります。しかし、人の尊厳や平等、そして個を尊重した社会に上での互いの信頼度が高く、人々は利益や物で争う必要がないので、そのような心配をする必要がないということです。
このような”安心できる生活”=安心感がデンマーク人の幸福感へとつながっているようです。
要は、「国を守るのは自国民しかいない」という国民の共生意識があると考えられます。
デンマークの建造物や象徴
シェイクスピアのハムレット
デンマークの建造物で最も有名なシェイクスピアの「生きるべきか、死ぬべきか、それが問題だ(“To be, or not to be, ― that is the question.”)」という名台詞も生まれた「ハムレット」。そのハムレットの舞台であるデンマークの首都 コペンハーゲン近郊の港町であるヘルシンオアにある世界遺産である古城クロンボー城。
さらには、デンマークの伝説上の英雄”ホルガー・ダンスク(上記写真左下の写真)”などもデンマークの象徴とされています。
デンマークの家具や玩具
北欧で言えば、スウェーデンのIKEA(イケア)、フィンランドのmarimekko(マリメッコ)などが有名です。
デンマークでは、インダストリアル・デザインが国民に浸透していることもあり、北欧デザインの「セブンチェア」や世界初のデザインホテルを手がけた建築家 アルネ・ヤコブセンなどの巨匠デザイナーも多く、上記の写真の中にもある工芸品の”ロイヤル・コペンハーゲン”やレゴブロック、そしてコペンハーゲン出身のヨーン・ウツソンが出掛けたオーストラリアのシドニー・オペラハウス(上記写真左下)が有名です。
デンマークのスポーツや競技
デンマークといえば、”サッカー”と答える人も多いほど、デンマークでは人気のあるスポーツです。また、人気を二分していると言われているハンドボール(デンマークが発祥の地)も忘れてはいけないデンマークの人気スポーツのひとつです。
その他にも、セーリングなどのウォータースポーツ、バドミントンや各種体操競技などの屋内スポーツも盛んに行われています。
デンマークの国民が敬愛する王室
デンマークではじめての女王となったマルグレーテ2世の滞在中には、アメリエンボー宮殿前広場で衛兵交代式も観光行事となっています。また。王位継承者第一位のフレデリック皇太子やアジア系の血を引くニコライ王子が大手モデル事務所と契約するなど、デンマーク王室は「国民に開かれた王室」として知られており、デンマーク国民は王室を敬愛しています。
デンマークの政治
デンマークの一院制
一院制(いちいんせい)とは、議会がただ1つの議院によって構成される制度。
参照元:ウィキペディア
フィンランド・ノルウェー・デンマークなどスカンデナヴィアなど高負担高福祉の北欧諸国では1970年代に両院制から一院制に移行しています。
一院制にしたことにより、選挙に比例代表制を採用になり、その比例代表制によって死票が生じることがなく「多角的な民意の反映」が実現されているし、議会の多数派による専制の阻止」につながっていることが、デンマークの国会の特徴であるようです。
女性議員37.4%
女性議員の割合は世界第20位デンマーク(参照元:GLOBAL NOTE)。先ほどもご紹介したとおり、総人口が少ないデンマークでは、女性の社会進出は必要不可欠ですので、それに伴い女性議員が多くなります。それはデンマークの国民性としてのノーマライゼーションの意識にもつながっています。
デンマークのエネルギー
風力発電の開発に力を入れている
デンマークが世界に誇れるものとして”風力発電”があります。これは国内の電気需要の20%(2018年時点)を賄ています。さらに再生可能エネルギー(風力発電)では、2025年までに50%に’引き上げることが可能との見通しを立てています。
つまり、デンマークは社会福祉の先進国でもあり、環境分野でも先進国(エコロジー)であると言えます。
デンマークは畜産王国
ランドレース養豚
国土面積も決して大きくない中、EUにおいて豚肉生産の約7.2%、豚肉輸出の約16.6%を占める養豚大国です。
自給率300%の食文化
デンマークでは自給率が300%。再生エネルギーも高く、非常にエコロジーな国。
デンマークの偉人たち
デンマークが生んだ童話作家
「みにくいアヒルの子」や「人魚姫」などの名作を生み出したハンス・クリスチャン・アンデルセン。オーデンセの貧しい家の子として生まれ、少年時代は友達も少なく、家にこもって人形芝居で遊んでいる夢想家として知られています。
そして1819年に首都コペンハーゲンへと移り住み、1835年に「即興詩人」「親指姫」などの初期の代表作で、デンマークに限らず、世界へと知れ渡り、ここ日本でお知らない人はいないほど、とても有名な童話作家です。
デンマークが生んだ哲学者
神学的に当時のデンマーク協会を痛烈に批判しており、変革を説き、進行と実存の問題を深く掘り下げました。プロテスタンティズムの革新的思想家として知られ、「死に至る病」という著書が有名です。
デンマークが生んだ教育者
デンマーク史において最も影響力のあった人物で、新しいデンマークの民主主義も形成に大きな影響を与えました。
北欧独自の教育機関
フォルケホイスコーレ
フォルケホイスコーレの特徴は、試験や成績が一切ないこと、民主主義的思考を育てる場であること、知の欲求を満たす場であることです。
加えて、全寮制となっており、先生も含めた全員が共に生活することなども代表的なフォルケホイスコーレの文化です。参照元:IFAS
このような自由な教育機関がデンマークにあり、デンマークの民主主義の確率に大きく貢献しています。
以下に、実際にフォルケホイスコーレに視察に行き、その様子をレポートにして詳しく書いていますので、合わせてお読みください。
関連記事:デンマークの自由教育「フォルケホイスコーレ(旧:日欧文化交流学院)」視察レポート
デンマークの教育制度
デンマークでは教育費は、高等学校、専門学校、大学全て無料です。国民大学だけは有料、他は一切の教育費が無料になっています。
デンマークは人と共に歩んでいくという教育が主であります。
教育の義務
日本の義務教育は9年間(小学校〜中学校)です。デンマークでは、義務教育とは言わず、”教育の義務(0学年から9年生まで10年)”と言います。
その違いを簡単に説明すると、「日本の義務教育は、学校に行かなければならない」ですが、デンマークでは「学校に行かなくても教育を受けさせれば良い」という教育です。
要は、連帯における自己責任の国でもあるので、「親が責任を持って教育すれば良い」という理解のもとでの教育の義務としています。
例えば、ある夫婦がヨットで世界旅行していたとします。しかし、日本では子供を学校に通わせなければならないんですが、デンマークでは学校に行かなくても、親が子供に教育させていれば良いわけなのです。
もちろん、全部の科目ができていなければならないというわけではなく、基本的な部分の知識を持っていれば良いと考えています。
また、学校の教育に納得いかない場合や、子供の成長が学校の教育と合わない場合に、親が自分で教育させる、あるいは家庭教師を雇うなどして教育を行うことができます。
子供は大切な資源
デンマークでは、子供は大切な資源だと考え、自由な環境で、日本でいう競争原理の教育とは全く正反対の教育を受けます。
デンマークの子ども手当
子供手当てについても、日本よりも多く、さらに18歳以上の学生にSUという教育支援として支給されます。
経済的にも安心できる環境です。
幼稚園児(3〜6歳時)
以下に、実際にデンマークの幼児、児童の教育の場である「森の幼稚園」に視察に行った際の様子をレポートを詳しく記事にしていますので、合わせてくお読み頂ければ、デンマークの保育についてご理解が深まると思います。
関連記事:デンマークの保育について「森の幼稚園」視察レポート
学年移行期間(6〜7歳児)
国民学校(6〜15歳)
全国の学力試験
デンマークでは日本のように頻繁にテストはありません。上記の画像を見て頂ければ分かる通り、黒い点の箇所の際に試験(どのくらいの学力があるのか)を行います。もちろん、その試験の点数は、何人中何番であったのかなどの順位をつけて、教育に差をつけることはありません。
日本では、個人の天性やタレント性によって結果が異なってしまう、体育や音楽、美術などにも、金賞や銀賞などで差をつけています。
体育などでも、早く走ったもの、高く飛んだものに良い点数をつける。そもそも身体の体格の差があるにも関わらず、それで点数をつけられる子供のことを考えれば、たまったものではありません。
同じ価値があるという教育
デンマークでは、授業などで子供たちがそれぞれに絵を書いたとしても、作品にAやBやCなどの競争原理はありません。子供たちが、それぞれのに能力で書いた絵だから、それぞれに同じ価値があるという教育を行っています。
デンマークの教師のほとんどが、「子どもたちの価値に差をつけられない」という考えをしっかりと認識し、理解を持っています。
高等学校
学歴社会というバカらしさ
高等学校の進学についても日本と違います。
日本ではほぼ99%が高等学校にいくという流れが主流であり、当たり前のことだとしています。しかし、地球上のパーセンテージで考えると、高等学校で習う知識をすべての人間が理解できるわけではありません。そのような難解なことで、子供が伸び伸び成長していく妨げになっていると考えます。
自分がしたくないことをやらされているという認識を植え付けるより、もっと子供たちが伸び伸びと成長できる社会を作る必要があります。
学歴社会というバカらしさに気づかないといけません。自分の身にならないのにも関わらず、学歴をとっておかなければならないという社会は、経済的にも不経済です。
本当に子供がやりたいことをやれば良いと思います。
そもそも学問は最高学府ですので、国民全有なんておかしい。
なぜ学歴社会というものが必要なのかを、しっかりと日本が気づかないといけません。
PISAテスト 日本と比較
学歴社会もなく、義務教育でもない、子供を伸び伸びと成長させる教育の義務を行っているデンマークで、日本と比べて順位の差はあれど、点数的にいうと、それほど変わっているわけではありません。
それでも、日本がそれぞれのリテラシーが高いことには変わりはありませんが、そこが目的ではありません。
国民が安心して生活できる保証があるからこそ、国民の幸福度が高くなるということです。点数が良い子供を評価するとかそもそもそういうことではないということを認識する必要があるのではないしょうか。
高校の卒業パレード
男性の育児や子育て
デンマークでは男性の家事・育児は当たり前
先ほどご紹介した通り、女性の社会進出がデンマークの社会福祉国家としての成長に大きく貢献してきました。その影では、女性だけが行ってきた”家事”や”育児”に関して、男性の力も忘れてはいけません。
デンマークでは、男性が家事や子育てに費やす時間が、世界1位です。この結果から見ても、男性だけに税収のウエイトがかかった国とは違う結果が出ているということです。
税金の用途
税金の用途はほぼ社会福祉に
上記のグラフを確認して頂くと、「教育費:13%」「保健・医療費:16%」「国民年金・休養手当・教育補助金・住宅援助金等:44%」、合わせて73%が社会福祉関連に使われていることが分かります。
アメリカや日本と違い、警察・防衛費の低さが目立ちます。つまり、何が国民にとって大事なことなのか?という根本的な幸せの形が、他国とは違うことがお分かり頂けると思います。
バンク・ミケルセン
社会福祉の現場
障がいを持った人々の活躍
障がいがあっても、社会に貢献することができるデンマーク。個人の個を尊重した社会だからこそできることです。
以下に、実際に知的障がい者の施設に視察に行き、その様子をレポートに詳しく書いていますので、合わせてお読み下さい。
高齢者福祉について
デンマークでは老後の心配が少ない
「老後、誰に面倒を見てもらおう」という心配がデンマークにあまりありません。日本では、年金や生活においての老後の心配がたくさんあります。
なぜデンマークでは心配がないのか?
デンマークは個人主義者です。先ほどご紹介したデンマークの哲学者であるキルケゴールのインディビジュアリズムと個人主義を訴えた「自分自身のことを一番に考える」という個人の自由を尊重することへの理解が、ほぼすべてのデンマーク国民にあります。
これは決してエゴイズムなどではありません。エゴイズムは利己主義ですが、個人主義は「自分自身を大切にする」ということです。だからこそ、デンマーク国民の特徴として、社会福祉国家という国民全てを保障する国を作ることができているわけです。
それはつまり、相反することが成り立っている国とも言えます。
以下に、実際にデンマークの高齢者施設の視察に行き、その様子をレポートに詳しく書いていますので合わせてお読み下さい。
また、実際にデンマークの各自治体にある福祉用具センターに行き、その様子をレポートした記事も書いていますので合わせてお読み下さい。
国民年金 早期年金について
65歳からの国民年金
デンマークの高齢者の生活は、65歳になると国民年金がもらえます。日本だと、掛け金が必要ですが、デンマークの場合は掛け金は一切必要ありません。例えば、労働市場にいたこともない(働いたことがない)、専業主婦をしてきた人々でも、億万長者であろうが、誰でも平等に国民年金がもらえます。
老後の面倒をみるのは誰か?
日本では、老後は子供に面倒見てもらうことが理想的であるという認識が大半であると思います。しかし、デンマークでは全く正反対です。
戦後、デンマークが社会福祉を目指しだしたのは1960年代。まず、工場や労働市場で女性の労働力を必要とし、女性がどんどん社会進出しました。
今まで女性は、今の日本と同じように家庭にあり、子供の面倒や障がい者の面倒を見ていた。あるいは高齢者の面倒見ていました。しかし、女性が社会進出することで、公は保育園や幼稚園をしっかり、障害者施設や高齢者施設をしっかり作らなければならないという動きになりました。
先ほどご紹介した通り、出生率に関係している”出産から育児”をしっかりと国が保証したことで、女性は安心して社会進出ができ、デンマークの社会福祉の発展に大いに貢献しました。
つまり、女性も男性と同じように、工場や施設、さらには政治など色々なところで活躍することになりましたので、女性も男性と同じように税金を払います。
男性だけが働いている、女性の社会進出が少ない国では、税金も男性が納めるだけなので、その税金にウエイトがかかります。しかし、デンマークの場合は男女共に同じくらい、70〜80%就業しているので、他の国の倍の税収があります。
インディビジュアリズムという生き方
そこでデンマーク人が将来誰に面倒を見てもらうか?と考えた場合に、子供たちは核家族化が進み、自分たちの好きなことして生きている。先ほどのインディビジュアリズムと相成り、そういった状況の中だからこそ、国(公)にみてもらうのが最善だと考えました。
実際に、日本人の方がデンマークの高齢者に「老後は娘や息子と一緒に過ごしたくないですか?」という質問に対して、10人中9.9人は「子供と一緒に住みたくない」という返答をしています。
そして、「なぜ子供と一緒に暮らしたくないのか?」と聞くと、
「子供にはそれぞれに生き方がある。そして自分たちも自分たちの生き方がある」と答えます。
これは、何度もお伝えしている通り、老後の暮らし=国民年金に不安や心配がないことで、インディビジュアリズムを尊重した人生を送ることが人生であるという考え方であるからです。
また、同居しているから家族の絆が強い訳ではないということです。
しかし、国(公)に老後の面倒をみてもらうとは言っても、高齢者施設に全高齢者が入居しているわけではなく、全体の20−25%くらいに過ぎません。それ以外の高齢者は、基本的に健康のまま在宅で老後を過ごしています。
死んでも保証されている
デンマークは、ゆりかごから墓場までと言われていますが、死んでしまったら保障がないじゃないか!と思われますが、デンマークではなんと葬儀代も保障されています。
つまり、デンマークでは ー
「ゆりかごから墓場まで」ではなく、
「ゆりかご以前から墓場まで」という保証だと言えます。
ホームレス寄付金14億円
デンマークでは連帯という意識が強いので、1週間で約14億円もの寄付金だって集まります。
平等の違いについて
日本では、上記のように平等とは、いかなる場合でも同じ割合という認識です。しかし、デンマークの平等とは、その人その人の状況や環境に合わせた公平という認識をしています。
デンマークのITと生活①
デンマークはデジタル化が進んでいる
意外かもしれませんが、アメリカやイギリス、そして日本を抑えて、デンマークは世界で一番デジタル化が進んでいる国でもあります。’
デンマークのITと生活②
教育にもデジタルを活用
子供を伸び伸びと成長させるにあたり、デジタルなIT技術を多く取り入れた教育を行っているのもデンマークの特徴であると言えます。
デンマークが幸せな国と言われる10の理由
では、ここでデンマークが幸せな国と言われる理由をまとめますとー
- ゆりかごから墓場までの社会福祉国家
- 食料自給率300%
- 男女格差の小さな国
- 女性の就業率が高い
- 女性の政治参加率が高い
- 汚職率が世界一低い国
- 再生可能エネルギーに重点を置く国
- イクメン王国
- 思いやりの国
- 真の民主主義の国
大きくわけて、これらの10の理由から、デンマークが幸せな国だと言われている理由が紐解けます。
では、実際にそのデンマークという国から日本が学ばなければならないことは?
日本が幸せな国になるためには
デンマークという国が、なぜ幸せな国と言われるのか?についてご紹介してきました。
では、そのデンマークから日本は何を学ばなければならないのか?について、ひとつの答えを導いていきます。
幸せの方程式を考える
数学や物理、そして科学には方程式があり、左辺と右辺が必ず=で結ばれます。その「=」になりえる福祉の方程式を考えてみました。
- 左辺【世界一幸せな国】=右辺【?】
幸せとは何か?
ここで先ほどからご紹介しているデンマークが幸せな国と言われる理由でもある【生活しやすい国=幸せ】という部分に着地してみましょう。
すると、こうなるのではないでしょうか。
- 左辺【世界一幸せな国】=右辺【生活大国】
さらに、生活大国という言葉をより掘り下げて考えてみると、【社会福祉国家】という言葉に自ずと結びついてきます。
社会福祉国家とは?
日本も社会福祉や社会保障に力を入れてはいるますが、日本は社会福祉国家とは言われたことがありません。
社会保障の対象者
言葉は悪いですが、社会的弱者、高齢者、貧困者、母子家庭、障がい者(児)、そういう方々の生活を保証するということが正しい。そして、それは国民すべての生活を保証することも含め、その方々を保証することが社会福祉国家であると思います。
その方々がまだまだ安心して暮らせていないのが日本の現状であると思います。
社会福祉国家として全国民に保障されていることがどんなことなのか?についてご紹介しましたが、その社会福祉国家、国民全ての生活を保障している国は、どんな国でなければならないのか?
それは、民主主義の国だということが、デンマークの社会福祉国家である理由から紐解けます。
民主主義の国である
民主主義。
しかし、日本では本当に民が主なのでしょうか?
デンマークの民主主義(デモクラシー)から日本の民主主義を見てみると、本当に民主主義なのか?と疑問に思います。
日本の国民は主権在民ということをしっかりと意識しなければならないということです。
まとめ
主権在民
国家の主権が国民にあること。
引用元:Weblio
どういう生活をしたいのか?
自分が障がい者になったり、老人になった時にどんな生活をしたいのか?
権利はあなた方にあります。
本当の民主主義とは?
主権が国民にある国は、社会福祉国家=幸せ国につながります。
民主主義を因数分解してみると、自由と平等と博愛、そして連帯です。
自由
日本は本当に自由なのでしょうか?成人になっても親に決定されることがたくさんあるのではないでしょうか?
平等
男性、女性、年少者、高齢者、障害者のあるなしに関わらず、人間としてこの国での価値観、平等を理解しているでしょうか?
博愛
博愛を因数分解すると、共生や連帯という言葉になります。
共生
人間しかり、動物、環境のことをちゃんと考えているでしょうか?
当たり前の生活とは何か
日本には200万とも300万とも言われる重い障がいを持っている方々が、当たり前の生活を送ることができない状況にあります。
寝たきりの高齢者についても、なぜ寝たきりにさせるのでしょうか?
デンマークでは寝たきりの高齢者はいません。人間が寝る時は、お昼寝や夜間、休む時、それ以外は起きているはずです。
日本のように、そもそも寝たきりの高齢者が何百万もいる事自体が、異常な状態だと言わざるを得ません。
なぜそのような状態になっているかというと、答えはお金です。
当たり前の生活を送るには、当たり前ですがお金ががかかります。
日本では、自分、そして家族を含め、生活する上での経済面はたくさんの心配があります。だから、高齢者福祉にはお金がかかるということで保険制度を開始しましたが、蓋をあけてみたらどうでしょう。
当たり前の生活を、国民すべての保証できているでしょうか。
デンマーク国民の連帯
そのような経済的に心配な部分を、自分(家族)だけではまかないきれないと考え、デンマークでは全国民で税金を収めることに賛成しています。
デンマーク国民が、その収入の関係なくし、累進課税によって、収入に応じた直接税として40から50%もの税金を払うことになります。しかし、そんな高い税金であっても、今の公共サービスに80%以上のデンマーク国民が満足しています。
ここに、先ほど紹介したインディビジュアリズムにおける、デンマーク人の連帯があります。
税金を納めれば、医療費無料 教育無料、障害者であっても経済的な心配は一切なくなり、老後の心配がない。だから税金を払っています。
日本では、老後のために貯金をしなければ生活の保証なんてありません。自分の老後は、国は保証してくれません。デンマークではその分税金を払い、国に貯金しているという認識です。
つまり、税金を払う義務こそが連帯だと理解しているからです。
要は、高福祉高負担がデンマークであると言えます。
では、デンマークのような幸せな国と日本が言われるためには、多くの税金を払えばいいという答えに行き着くことができます。しかし、現状はそう単純ではないことくらい、誰にでも予測がつきます。
保証してくれるなら税金を払うが 信用できない
日本人は、政治家を信用できていないという根本的な意識があり、さらには政治家であっても、社会福祉国家の意識がデンマークとは違うわけです。
それではどうすればいいのか?
本当の民主主義を国民にしっかり知ってもらう必要があります。
国民教育が鍵
それには国民教育が大切。
「日本が経済大国になるには、経済大国になるように教育をした」わけであり、「デンマークが生活大国になるには、生活大国になるような教育をした」ということになります。
経済大国になった日本の教育は、人よりも良い成績をとって良い学校に行って良い給料をもらって、競争原理を国民に押し付けています。
でも、デンマークでは先ほどからご紹介している通り「子供は国の大切な資源」だという考えのもと、子供への教育をしっかりすれば自分たちの国に役立つという原理で、いじめのないように伸び伸びと将来を決めていけるようにな教育に力を入れています。
つまり、日本のように義務教育(デンマークでは教育の義務)は必要ではありますが、幸せな国を作るなら、子どもたちへの競争原理を押し付けるような教育は正しいとは言えないのではないでしょうか。
平等とは その人その人の価値観
人間の平等は、本当にその人その人の違う価値観があり、力も違う。それぞれを公平に考えてこそだということです。
最後に
ということでこの記事では、当社協賛のもと、デンマークより、フォド・スヴェンセンさん、エヴァ・スヴェンセンさん、千葉忠夫 氏をお呼びして開催された「ノーマリゼーション in 長崎」の講演の中の千葉 忠生先生(以下、千葉氏)の講演③ 社会福祉国家への道「幸せな国づくりの方程式」の内容(参考)に基づきながら、デンマークという国が幸せと言われる理由についてわかりやすくまとめました。
あなたが社会福祉国家デンマークの社会福祉に興味があり、デンマークについて勉強してみたい!または、実際に現地に行きたい!という答えの参考になりましたでしょうか?
以下より、その他の講演の内容も合わせてお読み下さい。
- 講演① 安心して老いられる老後「社会福祉国家と介護保険制度国家の課題」
- 講演② 障がい者施設勤務者として生活指導教諭資格の必要性
- 講演③ 社会福祉国家への道:「幸せな国づくりの方程式」【本記事】
最後まで読んで頂きありがとうございました。
デンマークのノーマライゼーションの風に吹かれて
福祉先進国であるデンマークへ、ノーマライゼーションの勉強(視察)に行ってきました。その勉強(視察)の様子を、ドキュメンタリー風にまとめた記録映画です。
今回ご紹介した千葉 忠生先生(以下、千葉氏)の講演③ 社会福祉国家への道「幸せな国づくりの方程式」での実際のデンマークでの取り組みや活動の様子をご覧になることができますので、時間のある時に合わせてご視聴下さいませ。